設備保全の仕事で、「この装置のメンテは自分にしか出来ない。」と自慢する人がいますが、これは全く自慢に値しません。

自分のスキルを標準化し、誰でもメンテ出来るようにすることこそ自慢に値します。

なぜなら、それが一番難しく、そして価値のあることだからです。

 

ある面接官のノウハウ話を見て

最近はYouTubeにも転職系の動画がかなりアップされています。ほとんどは何かのCM用なのですが、最近見た動画に興味深いものがありました。

それはある営業系のキャリア採用を担当してきた面接官が語るノウハウです。面接で大事なことは〇〇だ、みたいなお話です。

 

その方いわく、面接で必ずこんな質問をされていたそうです。

「あなたにしか出来ない仕事は何ですか?それはなぜあなたにしか出来ないのですか?」

と言う質問です。

つまり、営業マンとして他のライバルにはない自分だけの営業スキル、ノウハウを持っているか、それはどんなものか、質問されたのです。

 

確かに、同じ会社の同じ営業部に属する営業マンでも、売上で2倍、3倍、へたすると10倍も差がつくことってあります。

売りまくる営業マンと売れない営業マンの差は何か?

売りまくる営業マンには必ず人と違う視点があり、営業ノウハウを持っています。それを武器にどんどん新規顧客を獲得し、リピーターを増やし、販売成績を伸ばすのです。

 

従って、営業職のキャリア採用で前述の面接質問は有効だなと思います。そこにハッキリ返事が出来る、自分のノウハウに自信を持っている営業マンなら戦力として期待出来ます。

 

設備保全で「自分にしかできない仕事」は異常

では、エンジニア職、設備保全マンの場合はどうでしょうか。

「あなたにしか出来ない仕事は何ですか?それはなぜあなたにしか出来ないのですか?」

と、営業マンと同じ質問をして、どんな答えを期待しますか?

 

「私が担当した設備には特別なメンテスキル、メンテ知識が必要で、私でないと無理です。」

仮にこんな回答だったら、面接官はどう評価するでしょうか。他の保全マンよりスキルが高いと評価して採用するでしょうか。

 

ちょっと考えてみて下さい。仮にも生産設備がある特定の保全マンにしかメンテ出来ないとしたら、こんな恐ろしいことはありません。

その保全マンが病気や事故で突然入院でもしたらどうします?設備に故障が起きないことを祈りますか?それでも定期点検は必ずやってきます。

場合によっては生産ラインが止まってしまう大トラブルへ発展しかねません。

 

私も半導体工場で設備周りの責任者を長くやっていました。そして設備ごとに担当者の振り分けは行っていました。

しかし、どの設備も複数の担当者を割り振り、誰かが休んでも必ずカバーできるようにしていました。これはどこの工場でも同じようにやるでしょう。

設備保全の多能工化として取り組む工場も多いと思います。設備の急な稼働率の変化にも対応しやすいですからね。

 

そして、本当に優秀な保全マンは自分のメンテスキル、ノウハウを標準化します。他の人にも出来るように考えます。

経験や勘が必要なメンテ作業には冶具立てするとか、測定器を使って定量化するとか、マニュアル化するとか、あの手この手を考えます。

自分が楽したいと言う想いもむろんあるでしょうが、ラインの安定稼働を考えれば当然の策です。

 

そんな保全マンは、新規設備が導入されると真っ先に担当に指名されます。新しい設備にはどんな保全スキルが必要となるのか、どんなリスクが隠れているのか、彼に探ってもらうのです。

そして彼が完全に保全可能状態を作り上げた後に、横展開していきます。

彼の存在価値は高く評価され、どんどんキャリアアップしていきます。これが本当に優秀な保全マンの姿だと思います。

キャリア採用で欲しいのはそんな人材です。

 

むろん、全てのケースで先ほど書いたような横展開が出来るとは限りません。あまりに高度なスキル、専門知識を必要とするため、横展開がおいそれとは出来ないケースもあります。

突出した能力を持つ特定の保全マンにおんぶにだっこ状態が生まれることもあり得ます。

 

それでも、「この設備のメンテは私だけしか出来ません。」と自慢している状態は異常です。

そんな状況を生み出してしまった保全の責任者は一刻も早く彼と同レベルの人材を補充するか、彼ほどのレベルでなくてもメンテナンス出来る設備に入れ替えるか、何等かの手を打つ必要があります。

 

それを自らも提案、指摘出来る保全マンこそが優秀な人材です。そして自分以外の保全担当者にも横展開できるよう対策を考え、実行出来る保全マンが頼りがいのある、保全リーダーにふさわしい人材と言えます。