『エンジニアは目が命』

これ、何だかどこかで聞いたような・・・

 

そうです、かつて『芸能人は歯が命』と言うキャッチフレーズの歯磨き粉のCMがありました。このCMが受けて歯磨き粉はバカ売れしたそうです。

今からもう25年も前のお話です。

 

では、『エンジニアは目が命』とは、いったいどういう意味でしょうか?

視力が2.0必要だと言う話?

いえ、決して視力の話ではありません。

 

かつて私が関西の事務機メーカーで機械設計の仕事を始めた頃、同じ職場にUさんと言う先輩がいました。

このUさんには機械設計のイロハから教えてもらいました。

とにかく、メカのセンス抜群の人で、設計はむろん組立て、デバッグ、何をやってもすごい人でした。

 

そして、私が最も関心したのは目が抜群にいいことでした。

いえ、視力の話ではありませんよ。視力じゃなくて、観察眼のことです。とにかく、人一倍の観察眼を持っていて、「じっとにらめば、ピタリと当たる」と言う感じでした。

 

例えば私が設計して組み立てた商品が、どうも思うような動きをしない。そんな時、Uさんはじっと私の商品をにらみ、おもむろに言うのです。

『おい、こりゃここの軸受けがまずいぞ。もっと軽く動かないと。』

そう言われてみれば確かに少しだけ動きが固い。それをちょっと見ただけで気付き、指摘してくれるのです。

まさにUさんにとって「エンジニアは目が命」と言う感じでした。

 

機械設計にしろ、設備保全にしろ、生産技術にしろ、目の前で動く設備を観察する目は必要です。正常に動作しているか、どこかに異常はないか、それを見極める眼力が必要です。

 

入社して最初に面倒を見てもらったUさんを始め、それ以降に知り合った優秀なエンジニアはことごとく皆さん、目が素晴らしく良かったです。

私の知る限り、優秀なエンジニアは例外なくこの眼力が素晴らしいです。

 

では、その眼力、観察力はどこから来るものか?

私がUさんの日々の仕事ぶりを見て思ったのは、とにかく何でもかんでも観察しまくる、その好奇心の旺盛さです。

 

つまり、何が異常かを見極めるには、何が正常かを知っている必要があります。当たり前のようで、実はこれが大変難しいのです。

日頃から自分の関心範囲を広げ、アンテナを張り、機会あるごとに観察して自分の引き出しにしまっておく事が必要です。

 

他の社内担当者が取り組んでいる商品はむろん、他社製品までも観察しまくる。可能な限り展示会に足を運び、同業者だけでなく異業種の商品にも目を向ける。

それを義務感から仕方なしに見ているのではなく、メカ屋の好奇心から観察し自分なりに納得している。そこが素晴らしいのです。

 

同じ機械要素、機構部品を見ても、それを後の仕事に活かせるかどうかはどこまで関心を持って見ているかで決まります。

何となくボーっと見ていてもダメなのです。役に立ちません。

 

つまり、様々な事例をインプットする眼力と、それを何かの機会にアウトプットする眼力、その両方が必要なのです。

それが「エンジニアは目が命」と言う意味です。

 

そして観察するのは目から入る情報だけではありません。場合によっては音だったり、触感だったり、匂いだったりします。

 

私がUさんやその他の優秀なエンジニアを見ていて思うのは、そうした様々ものへの好奇心、観察力は生まれつきの資質ではないかと。

まるで高い山へ登るのが好き、と言うのと同じ感覚で色んな商品を見たり触ったりして観察するのが好きなのです。

 

私自身は30年間、メカ屋として設計、保全、生産技術の仕事をやりましたが、残念ながらUさんレベルの眼力はありませんでした。

やはり生まれ持っての資質なのだと思います。同じように見てる積りでも、違うんですね。センスが違う、と言う表現が当たってるかも知れません。

 

さて、あなたの眼力はいかほどでしょう。エンジニアとしての目はいい方でしょうか?

観察力は人一倍優れていると思いますか?

 

ある程度は訓練によって観察眼は磨くことが出来ると思います。しかし、本当に優秀なエンジニアレベルの眼力は、やはり生まれ持った資質のように思えます。