当サイトで、以前『設備を安定稼働させるための考え方』と言う記事を掲載しました。

今回はその実例を紹介したいと思います。

 

量産工場では設備安定稼働を検証する指標の1つ、良品歩留まりに関する記事です。

異常歩留まりの対策にあたった対策チームが見つけた意外な原因とは・・・

 

異常歩留り発生!

かつて私が勤務していた工場でこんなことがありました。

ある、主力の生産設備が非常に歩留まりが悪くて生産に使用出来なくなってしまいました。元々歩留まりの悪い設備ではあったのですが、あまりに落ちて使用不可となったのです。

 

そこで緊急に対策チームを作って対応にあたりました。本来のメンテナンス担当者は何人かいるのですが、彼らだけでは短期復活は難しいと判断したのです。

 

トラブルで悩む

 

対策チームが主体となって現場確認を繰り返し、1つずつ原因を探っていきました。

そこで分かったことは、日常点検、及び定期点検における不備の数々です。

・交換部品の取り付け精度が出ていない。

・ベルトが摩耗してスリップしている。

・心臓部にゴミやほこりがたまってセンサの感度が落ちている。

・配管周りのクリーニングが不十分でエアー圧が落ちている。

こうした不備が次々に分かってきました。

 

そこで対策チームは不具合点を1つ1つ解決してゆき、約2週間かけて完全に正常な状態へ復帰させることに成功しました。

なぜ歩留まりが落ちたのか、その原因は究明出来ました。そして対策も完了しました。

 

意外!真の原因は?

不具合1つ1つの客観的データを全て揃えて報告書が作成されました。対策前後の写真が添付され、また歩留まりの変化もデータが添付されました。

 

ここで対策チームの仕事はひと段落した訳ですが、これですべて完了とは行きませんでした。日頃メンテナンスをしていた担当者の問題が残っています。

なぜ、担当者はこんなずさんなメンテナンスをしていたのか。正常な状態を保つことをしなかったのか。

 

「メンテナンス担当者の作業不備」とだけ報告書に書いたのでは、全く不十分です。作業を行った側の主張にも耳を貸す必要があります。

そうしないと、時間が経てばまた再び歩留まりは異常値に戻ってしまう危険性が大です。不具合の客観データとは別に作業者の主観情報が必要なのです。

 

そこで対策チームは日常のメンテナンスを担当している作業者にヒアリングを行いました。

責任追求をしているのではない、ただ本当の理由が知りたいだけだ、今後の改善につなげたいだけだ、と繰り返し説明して本音を話してもらいました。

 

そこで分かったことは、彼らが「もともとこの設備はこの程度の歩留まりだ」と思っていたことです。

定期点検や日常点検がやたらと項目が多くて時間がかかり、そのくせちゃんとやっても、やらなくても歩留まりは大して変わらないと思っていたのです。

 

その為、日常点検も定期点検も手抜き作業が常態化してしまったのです。

どうしてそう思うようになったのか、聞いてみると前任者から引き継いだ時にそう聞かされ、事実自分でやってみてその通りだと確かめたと言うのです。

 

ここには非常に根深い問題が潜んでいました。メンテナンス担当者に正規の点検マニュアルに対する信頼感がなく、実効性も信じていなかったのです。

これでは設備の安定稼働維持など出来ようはずもありません。

正直、この原因は私には全く意外なものでした。

 

ここで本当の原因が分かり、その対策が見えてきました。

●メンテナンス担当者に、点検項目の1つ1つを原理から説明し、なぜ必要なのか、不備だと何が起きるのか納得がいくまで説明しました。

●その上で、日常点検、定期点検がもっとやり易く出来ないか、全員で検討しました。主力メンバーが、これなら出来ますと言ってくれるまで徹底的に見直しました。

●異常歩留り設定も見直し、設備の異常を早期に発見できる仕組みも構築しました。

 

ここまでやって、やっと根本対策が完了したのです。それ以降、設備起因で異常歩留りが発生することはありませんでした。

 

トラブル解決

 

まとめ

日常点検にしろ、定期点検にしろ、その点検が持つ意味を担当者が十分理解していないと点検の効果が出ません。

『設備を安定稼働させるための考え方』で説明した通りです。

 

また、管理者として点検作業の手抜きが常態化していることに長年気付かなかったことも問題でした。

点検シートに適当にチェックが入っていると、それ以上実機で確かめることはしません。信頼関係で運用されています。

 

しかし今回のように本人にあまり罪悪感がないまま手抜きが行われていることもあったのです。

このトラブル以降、私は点検作業をやっている現場へなるべく多く足を運ぶようにしました。

 

それはちゃんとやっているかチェックしに行くのではなく、何か問題はないか、困っていないかと話を聞きに行くようにしたのです。

そこでコミュニケーションを密にすることで、彼らの本音を聞き出すことが出来るようになりました。

私には色々と考えさせられる異常歩留り対策でした。