あなたはどんな性格、どんな適性を持った人が設備保全やメンテナンスの仕事に向いていると思いますか?

私は半導体工場で設備保全の責任者をやってるとき、200人以上の保全スタッフの採用面接を行いました。

例え面接の短い時間であっても、

「この人は設備保全に向いている」

「この人に設備保全は無理だ」

と言う判断がある程度は出来ました。

 

取り合えず私の判断基準は後回しにして、まずは設備保全の求人を出している企業が、どんな志向、適性の人材が望ましいと考えているかデータを紹介しましょう。

その後で私自身が設備保全要員採用にあたって重要視していた志向・適性についてもお話したいと思います。

 

企業が設備保全要員に求める志向や適性とは?

様々な企業が設備保全の求人を行っています。そして求人票には応募するのに必要な専門資格やキャリアが載っています。

そして多くの場合、資格やキャリアと並んで「望ましい人材像」の要求が載っています。企業としてどんな志向、適性の人材を欲しいと思っているのか分かります。

志向と言うのは、分かり易く言えば、何を目指しているのか、どうなりたいと思っているのか、と言う意味です。

 

サラリーマンパワー

 

私は複数の転職サイトを使って、求人企業が設備保全やメンテナンスの求人にどのような適性、志向を求めているか50社ほど調べてみました。

すると、各社でほぼ同じような要求が繰り返し出てくることが分かりました。それは次のようなものでした。

 

■企業が求める設備保全要員の志向・適性

①機械いじりが好きな人

②モノづくりに興味のある人

③小さな変化に気がつける人

④ヤル気と元気がある人

⑤これから自信をつけたいと思っている人

⑥実績を作っていきたいと思っている人

⑦経験を活かしたいと思っている人

⑧周囲との協調やコミュニケーションを大切にできる人

⑨将来なりたい自分自身の姿を描き、意欲的に学べる人

⑩ルールを遵守し、責任感をもって働ける人

⑪社会に貢献できる仕事にやりがいを感じられる人

⑫人と会話することが好きな人

⑬フットワークが軽い人

⑭協調性があり、チームで仕事ができる人

 

50社を調査してみると、このような志向・適性の人材を設備保全要員として企業は求めていることが分かりました。

 

この要望をよく見ると、確かに①番から③番までは設備保全要員の志向・適性として分かります。でも④番以降は特に設備保全の仕事に特化された志向や適性とは思えません。

 

ルールを守るとか責任感や協調性、コミュニケーション能力はどんな仕事、どんな職場だって重要です。エンジニアとしての適性と言うよりサラリーマン、社会人としての適性です。

 

工場の設備を安定稼働させると言うのは非常に重要な役目なので、こうした一般的な常識、素養を持った上でエンジニアとしての適性を求めている訳です。つまり技術や知識だけあっても、常識や責任感のないエンジニアは不要と言うことです。

 

では次に最初の3つの適性についてもっと突っ込んで考えてみたいと思います。

 

機械いじりが好きじゃないと設備保全への転職は無理?

さて、「機械いじりが好きな人」と言う要求はとても多くの求人票に出てきます。では機械いじりが好きじゃないと、設備保全とかメンテナンスを仕事にするのは無理でしょうか?

普通に考えて、設備保全の求人だから「機械いじりが好きな人」を募集するのは当然と言えます。機械を触ることが大嫌いな人に設備保全は向いていないでしょう。

 

しかし、設備保全に必ずしも「機械いじりが大好き」である必要はありません。

なぜなら、設備保全とは機械をいじることだけではないからです。

つまり、「設備保全=機械いじり」ではないのです。

 

仮に機械いじりが大好きな人ばかり集めて設備保全チームを作ったとしたら、その組織は多分満足に機能しないと思います。

機械いじりが好きなことが、邪魔になる訳ではありません。ただそれだけでは設備保全は機能しないと言う意味です。

 

機械いじりの他に、こんな仕事も必要

私は半導体工場で凡そ20年間、設備保全の仕事をやっていました。そして設備保全の現場には、確かに機械いじりが大好きなスタッフが大勢いました。

 

しかし、その一方であまり機械いじりをやらないスタッフも複数いました。

では彼らはいったいどんな仕事をやっていたでしょう?

 

それは、こんな仕事です。

 

●設備保全のツールやアプリケーションの作成。

●保守部品の在庫管理と発注業務。

●設備管理の為のデータ採取とデータ分析。

●顧客との窓口、社内他課との調整業務。

 

こうした仕事も設備保全には必要であり、これらの業務を得意とする人材もまた必要です。

むろん、どれも設備保全としての業務ですから、対象は何等かの設備です。

機械いじりはしなくても、生産設備に対する関心、興味がないと務まらない仕事ではあります。

 

例えば設備保全のためのツールとして定期点検マニュアルがあります。マニュアル通りに点検すれば、誰がやっても同じ品質が維持できる、そんなマニュアルが必要です。

 

この点検マニュアルを作る仕事は機械いじりが大好きな人に向いているかと言えば、必ずしもそうとは言えません。

工具を持って機械にもぐってるのは大好きだけど、デスクワークは苦手、そんな人もけっこう多くいます。

 

逆に点検マニュアルを作るのは得意だけど、機械いじりはそんなに得意じゃない、と言う人もいます。

設備保全の中にも得手、不得手、向き、不向きは存在します。

 

ただ、設備保全のための点検マニュアルですから、設備そのものに対する知識や保全スキルがないと役に立つマニュアルは作れません。

機械いじりが得意じゃなくても、ある程度は自分で保全することが可能なスキルは必要です。

 

モノづくりへの関心があること

それから機械いじりが好きとか得意とかの前に、モノづくりに対して関心を持てることも必須条件です。

50社の調査で要望される適性の中に「モノづくりに興味のある人」とあるのは当然です。設備保全に限らず工場で働く人はみなモノづくりへの興味、感心がないといい仕事は出来ません。

 

なぜなら、何の為に自分の仕事は存在するのか、と言う本質が理解出来ないからです。保全の為の保全に走ると危険です。モノづくりの為の保全であることが大前提です。

 

ただし、設備保全の仕事は生産工場だけに限りません。発電所や変電所にも設備保全の需要はあるし、大型商用施設や高層ビル、テーマパークのような場所にも保全対象の設備は多数存在します。

こうした工場以外の設備保全やメンテナンスにおいてはモノづくりへの興味や関心はさほど需要でないかも知れません。その代り、何の為の保全業務か、と言う個別の目的を理解する必要はあります。

 

小さな変化に気がつける人とはどんな人?

企業が求める設備保全の適性として、「小さな変化に気がつける人」と言うのがあります。表現は多少違っても、この適性は多くの企業が求めています。

理由としては、故障やトラブルが大事に至る前にわずかな変化や小さな異常でも気付き、事前に対策を打てる人材を求めているからです。

では、小さな変化に気が付ける人とは、具体的にはどんな人でしょうか。それは、目がいい人です。

 

目がいいって、視力が2.0必要だと言う話?

いえ、決して視力の話ではありません。

 

かつて私が関西の事務機メーカーで機械設計の仕事を始めた頃、同じ職場にUさんと言う先輩がいました。

このUさんには機械設計のイロハから教えてもらいました。

とにかく、メカのセンス抜群の人で、設計はむろん組立て、デバッグ、何をやってもすごい人でした。

 

そして、私が最も関心したのは目が抜群にいいことでした。

いえ、視力の話ではありませんよ。視力じゃなくて、観察眼のことです。とにかく、人一倍の観察眼を持っていて、「じっとにらめば、ピタリと当たる」と言う感じでした。

 

例えば私が設計して組み立てた商品が、どうも思うような動きをしない。そんな時、Uさんはじっと私の商品をにらみ、おもむろに言うのです。

『おい、こりゃここの軸受けがまずいぞ。もっと軽く動かないと。』

そう言われてみれば確かに少しだけ動きが固い。それをちょっと見ただけで気付き、指摘してくれるのです。

まさにUさんを見ていると「エンジニアは目が命」と言う感じでした。

 

設備保全にしろ、メンテナンスにしろ、目の前で動く設備を観察する目は必要です。正常に動作しているか、どこかに異常はないか、それを見極める眼力が必要です。

その眼力を持った人が「小さな変化に気が付ける人」なのです。

 

では、その眼力、観察力はどうすれば身につくものなのか?

私がUさんの日々の仕事ぶりを見て思ったのは、とにかく何でもかんでも観察しまくる、その好奇心の旺盛さです。

 

つまり、何が異常かを見極めるには、何が正常かを知っている必要があります。当たり前のようで、実はこれが大変難しいのです。

日頃から自分の関心範囲を広げ、アンテナを張り、機会あるごとに観察して自分の引き出しにしまっておく事が必要です。

 

同じ機械要素、機構部品を見ても、それを後の仕事に活かせるかどうかはどこまで関心を持って見ているかで決まります。

何となくボーっと見ていてもダメなのです。役に立ちません。

 

そして観察するのは目から入る情報だけではありません。場合によっては音だったり、触感だったり、匂いだったりします。

 

私がUさんやその他の優秀なエンジニアを見ていて思うのは、そうした様々ものへの好奇心、観察力は生まれつきの資質ではないかと。

まるで高い山へ登るのが好き、と言うのと同じ感覚で色んな商品を見たり触ったりして観察するのが好きなのです。

 

私自身は残念ながらUさんレベルの眼力はありませんでした。やはり生まれ持っての資質なのだと思います。同じように見てる積りでも、違うんですね。センスが違う、と言う表現が当たってるかも知れません。

 

さて、企業が求めるエンジニアとしての眼力、あなたはエンジニアとしての目はいい方でしょうか?

観察力は人一倍優れていると思いますか?

 

もしあなたが自分で不十分だと思っても悲観することはありません。ある程度は訓練によって観察眼は磨くことが出来ます。しかし、本当に優秀なエンジニアレベルの眼力は、やはり生まれ持った資質のように思えます。

 

フットワークの軽さはとても重要な適性

さて、先ほどの企業が求める保全要員としての適性の中に、「フットワークが軽い人」と言う項目がありました。実は私自身が採用面接を行うとき、この点は非常に重要視していました。

私が勤務していたような中小企業にあって、フットワークの軽さは必要不可欠な適性と言えます。

 

ではフットワークが軽いと言う表現からどんな人物像をイメージするでしょうか。

判断、決断が早くすぐに行動に移せる人。切り替えが早く多少つまづいてもどんどん前に進む人。口だけじゃなく行動力が伴っている人。

 

更には人脈作りがうまく、人の力を上手に借りて問題解決が出来る人、と言うイメージもあります。自部署だけに留まらず他部署にも顔が効いて、いざとなれば無理なお願いを通してしまう人。

これがフットワークの軽い人です。

 

企業が設備保全やメンテナンス要員にフットワークの軽さを求めるのは、万一トラブルや故障が発生した時に一刻も早く復旧させて欲しいからです。

すぐに現場にかけつけ、原因調査、暫定対策を打つ、そこにスピード感が欲しいからです。責任論やセクショナリズムで動きが鈍い人は使えません。

 

私が知る限り、フットワークが軽い人にはこんな特徴があります。

 

●物事の優先順位の付け方が正確。そして優先順位の高いものはすぐ行動にうつす。

●自分の専門分野以外にも知識や情報を持っていて、守備範囲が広い。

●初対面でも物おじしない、緊張しない。すぐに打ち解けて仲良くなれる。

●色んなことに興味を持ち、とにかくかじってみる、首を突っ込んでみる。

●失敗しても引きずらない。気持ちの切り替えが早い。

 

私が面接する時はこうした性格を持ってるかどうか、注目していました。フットワークの軽い人はどんな職場でも必要ですが、設備保全、メンテナンス職でも非常に需要な適性の1つと言えます。

 

まとめ

今回は設備保全やメンテナンスの仕事に向いている人、向いていない人について記事にしました。

結論から言えば、まず設備保全に特化した適性の前に、責任感や協調性などの社会人、サラリーマンとして当たり前の適性や素養を持っていることが必要です。

 

その上で、

①機械いじりが好きな人

②モノづくりに興味のある人

③小さな変化に気がつける人

④フットワークの軽い人

 

と言った適性が求められています。こうした適性を持ってる人が設備保全の仕事に向いているのです。

 

さて、この記事を読んで、あなた自身は設備保全に向いていると思いますか?それとも向いていないと思いますか?

もしあなたが設備保全への転職を目指しているのに適性が十分ではないと思ったら、その時はなぜ設備保全の仕事に就きたいと思っているのか、そこを考えてみて下さい。

 

あなたの設備保全と言う仕事に対する想い、志望動機がいかほど熱いものか、強いものか、それによって転職の道が拓けてくるはずです。