設備保全の面接で一番大事なことは何だと思いますか?
それは、
「この人なら生産ラインの保全を任せても大丈夫だ」
と信頼してもらうことです。この1点に全精力を注入すべきです。
私は設備保全の求人に関して200人以上の面接を行ってきました。その私の経験から、特に設備保全に絞った面接の受け方を考えてみたいと思います。
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設備保全の面接で一番大事なこと
あなたもすでに色々な転職ガイドを読まれていることでしょう。どの本にも面接の受け方は多くのページ数をさいてノウハウを解説しています。
確かに転職に際して面接は大きな壁です。せっかく書類選考をパスしても面接で不合格になれば採用してもらえません。何としても面接を突破しなくてはなりません。
では、どうやれば面接で合格出来るのでしょうか。ノウハウ本にはそれこそ、おじぎの仕方からドアの開け方、椅子の座り方まで細かいことがびっしり書かれていたりします。
それを確かめるには街の本屋で就活本を読むまでもありません。ネットの大手転職サイトを見ればすぐ分かります。
例えばマイナビエージェント、リクルートエージェント、dodaなどの転職サイトでは「転職成功ノウハウ」として面接の受け方をかなり詳しく解説しています。
それこそ面接のマナーがずらり書かれてあります。
それはそれで大切なことばかりでしょうが、私のように設備保全の面接ばかり長年やっていた経験からすると、
「ちょっと違うなぁ」
と思わざるを得ません。大事なのはそこじゃない、と言う思いを強く持ちます。
まぁ、強いて言うならdodaの面接マニュアルはそれでも私の感覚に近いことが書かれてあります。設備保全の面接でも大事だな、と思うことが書かれています。後で読んでみて下さい。
さて、今も書いたように多くの就活本、転職マニュアル本、ネットの転職サイトでは面接のマナーについて様々なアドバイスが書かれています。
確かにそれはビジネスマナーとして重要かも知れませんが、採用するか不採用にするかの大きな判断材料ではありません。
少なくとも設備保全要員を採用するのに面接の椅子の座り方が重要視されることはありません。
設備保全の面接で一番大事なことは、
『面接官にあなたなら工場の設備を任せても大丈夫だと信頼してもらうこと』
これです。
ここが設備保全の面接で最も大事な点であり、一点突破とも言えます。
全ての受け答えはその信頼感を生む方向を向いていないと合格を得ることは出来ません。
では具体的にどう面接に対応すればいいのか?それをお話したいと思います。
3つの面接鉄板質問にどう答える?
面接のやり方はそれぞれの会社や面接官によっても違うでしょう。しかし、ほとんどの面接では次の3点を聞かれます。
①あなたが今までどんな仕事をして来たのか?
②なぜ今の会社を辞めて転職しようと思ったのか?
③なぜこの会社、この仕事を選んで応募したのか、志望動機は何か?
この3つです。私も必ずこの3点は面接で質問していました。
この質問は設備保全の面接に限らずどんな仕事の面接でも必ず聞かれる、言わば面接の鉄板質問です。そして、あなたはこの問に対して先ほど述べた、面接官を安心させる、信頼してもらえる回答をしなくてはなりません。
そこが面接官に伝われば、おじぎの仕方やドアの開け方や椅子の座り方など問題ではありません。そんな本筋から外れたことを気にするより、面接官の信頼を得ることに全神経を集中させるべきです。
では面接では具体的にどう回答すれば信頼されるのでしょうか?
①あなたは今までどんな仕事をして来たのか?
まず、この質問からです。
面接で私がこの質問をすると、こう答える人がいます。
「●●●と言う商品の製造ラインで、〇〇〇と言う工程の△△△と言う設備の保全を担当していました。」
設備保全の面接でこんな答えでは全く不十分です。私はその工場に行ったこともないので、工程の名前や設備の名前を聞いてもピンときません。その人の仕事ぶりなど分かりようがありません。
繰り返しますが、あなたを面接する担当者に、あなたに設備の保全を任せようと言う気持ちを持ってもらうことが必要なのです。
採用する会社側からすると、いったい保全要員に何を期待するか。どんな人材を望んでいるか。そこをしっかり理解した上で面接を受けることが大事です。
その観点から言えば、面接では
「どんな設備を担当していたか」
よりも、
「どんな保全業務をしていたか」
の方がずっと重要なのです。
言い換えると、
「どんな実績を残してきたのか」
これが重要です。
私たち、面接官が知りたいのはそこです。
あなたが保全担当者として生産ライン安定稼働のために、どんな取り組みをしてきたのか、どんな苦労があったのか、どんな努力をしてきたのか、そこをしっかり面接官に伝えて下さい。
それは何も特別なことを伝える必要はありません。生産ラインにおける設備の安定稼働とは、当たり前のことを、当たり前に確実に実行することで維持出来ます。
多くの製造現場ではその当たり前のことが出来ずに問題を抱えているのです。
例えば、
①定期点検の実施による予防保全
②保守部品の適正在庫による停止時間の短縮とコストダウン
③保全担当者教育による、保全チーム全体のスキルアップ
このようなことです。こんなことは大抵の製造現場で行われていることであり、目新しさはありません。言うなればやって当たり前のことばかりです。
しかし、この当たり前のことに多くの保全現場は苦労しているのです。
だからこそ、あなたが設備安定稼働のために、当たり前のことにどう取り組み、どんな成果を出してきたのか、それをアピールするのです。
それが面接官に伝わったとき、あなたに設備保全を任せても大丈夫だと安心してもらえるのです。
その為には、あなたの取り組み、成果を可能な限り具体的に話して下さい。
●定期点検の実施
誰でも一定の品質を維持できる点検マニュアルを作成し、部内教育を行った。それによって点検時間が20%削減出来、予防保全の効果もアップしてトラブル回数が80%減となった。
●保守部品の適正在庫
在庫管理ソフトを自分たちで作成し、その運用によって在庫コストが15%削減できた。また部品待ちの時間をゼロにすることが出来た。
●保全担当者教育の実施
1人の保全担当者が複数の設備、複数の工程を担当出来るよう年間計画を立てて教育を実施。教育用のテキストの作成と講師を担当した。
こんな感じで、内容が具体的に分かるよう、話せるといいですね。この時、あまり多くを話そうとせず、1つか2つに絞って丁寧に話した方がいいと思います。
それと、当然ですが本当にあなたが実践出来たことを話して下さいね。作り話は必ずボロが出て墓穴を掘ります。
繰り返しますが、特別なこと、特殊なことを話す必要はありません。あくまであなたのやってきたこと、実践してきたことの中から選んで話して下さい。それが最も説得力のある話になるはずです。
更に、
●設備が安定稼働して製造の人に喜んでもらえたり、感謝されたりすることが仕事のやりがいです。
●自分が担当している設備で製造された商品が、世界中のお客様に届いている事がすごく誇らしい気持ちです。
面接ではこんな一言も添えるといいですね。単に設備を見ているだけでなく、その向こうにいる製造の人、更にその向こうのお客様まで意識して仕事をしていると伝えましょう。
ただし、あなたが本当にそう思っていないと逆効果になります。面接官に見透かされてしまいます。
②なぜ今までの会社を辞めて転職しようと思ったのか?
次はこの質問です。
私が面接でこの質問をすると、信じられないことにこんな回答をした応募者が実際にいました。
●残業や休日出勤が多くてきついから。
●設備が止まると製造から文句を言われて耐えられないから。
●嫌な上司がいて、いくら頑張ってもちっとも評価されないから。
残念ながら、面接でこれを聞いた段階で採用しようと言う気が消え失せます。まず不合格です。
こんな回答は私に限らずどんな面接官にも信頼感を持たれません。むろん、残業や休日出勤が過度に多いとか賃金に反映されないなどのブラック企業なら話は別です。
しかし、仮にそうであっても面接ではそんなマイナスイメージの理由ではなくもっと前向きなプラス志向の理由を伝えましょう。
例えばこんな回答です。
●今の会社ではこれ以上自分の保全スキルが伸びないと思ったから。もっと高度な難しい技術を身に着けたい。
●今の職場では取得した資格や、身に着けた技術を発揮する機会がない。もっと活躍できる場所が欲しい。
●将来的には生産技術、プロセス技術のエンジニアを目指したい。今の会社ではそのチャンスを得る制度がない。
つまり、設備保全の担当者としてもっと活躍したい、もっと高いレベルを目指したい、その為に転職して自らチャンスを得たい、そんな熱意を面接では伝えましょう。
また、それらの理由が今の会社、今の職場では叶わない理由も考えておきましょう。これもよく面接官から突っ込まれる質問です。
あくまで今の会社や職場が悪い、ダメだ、と言うマイナス理由ではなく、あなたがもっと活躍するには高度な技術が要求される職場、新しい技術にチャレンジ出来る職場が必要だと判断したことを面接で伝えましょう。
繰り返しますが、休みが欲しい、給料が欲しい、楽な仕事に就きたい、そんな転職理由は絶対にNGです。あなたの意欲を疑われます。
③なぜこの会社、この仕事を選んで応募したのか、志望動機は何か?
さて、3つ目は志望動機です。これ、けっこう苦戦する人が多いようです。あれこれ悩んで思いつかない人がいるみたいですね。
面接でこちらが質問しても満足な回答をしてくれる人は案外少ないように思います。
でもそんなに難しく考えることはありません。
あなたが面接を受ける会社のことを調べれば自ずから志望動機も説明出来ます。相手企業のホームページは無論じっくり読みましょう。大きな会社ならネットや新聞、雑誌に記事が載っていることもあるでしょう。
それから求人情報の中にも多くの情報が載っています。仕事内容はむろん、会社の概要説明や今後の展開なども説明されていることが多いです。
それらの情報からどんな製造ラインが予想されるのか、どんな設備保全が必要とされるのか、あなたの頭の中でイメージして下さい。
そこからあなたの志望動機が形になってくるはずです。
例えば、
●オリジナル商品の開発に熱心であり、新商品と共に設備保全もどんどん新しい技術に挑戦できると思った。
●工場内に多くの製造工程を持っているので、自分の活躍できる場所も多いと思った。
●自分が過去に習得してきた保全スキルが発揮できそうで、即戦力になれると思った。
●海外にも工場が多いので、いずれ海外でも活躍してみたいと思った。
このような前向きでかつ、企業の実情にも合致した志望動機を面接で伝えるのです。少し時間とエネルギーを使えばあなたにも必ず出来るはずです。
しかし、私が過去に面接を行った応募者で、うちの会社の情報を調べ挙げた上で志望動機を語ってくれた人は1割もいませんでした。
むろん、ほとんどの応募者は多少はホームページなどを見ています。しかし、徹底的に調べて自分の志望動機として落とし込んでいる人は少ないのです。
例えば、多くの応募者はこんな感じです。
「御社の〇〇〇は非常にユニークな商品でこれから増々市場に出ると思います。ぜひ私もその製造に携わってみたいと思いました。」
この程度です。いかにも面接前にちらっとホームページを見たと言う感じです。
そうではなく、
「御社の〇〇〇は非常にバリエーションも多く新機種も次々に出ています。私が市場規模を調べたところ、この5年間で40%も拡大しています。
この先も安定した拡大が見込めるはずで、きっと製造ラインには新しい設備も導入されて活気にあふれていると思います。そんな現場で設備保全として活躍したいと思いました。」
あなたが主力製品の情報、量産工場の増設などの情報を把握していればこのくらいは言えますよね。
面接する側からすれば当然そのくらいは知っていて欲しいと思うことを知らないまま面接に来ている人が多いのです。
だからこそ、面接であなたに他の応募者と差をつけるチャンスがある訳です。ホームページをただ見るだけではなく、調べるのです。それも徹底的にです。
その徹底ぶりはあなたの志望動機の熱意として必ず面接官に伝わります。
設備保全やメンテナンスの志望動機の書き方については、別の記事でもっと掘り下げています。ぜひ参考にして下さい。
補足:コミュニケーション能力に不安を感じさせない
この記事を読んで頂いてありがとうございます。実は、当サイトで一番アクセスが多い記事がこの記事です。
Googleで「設備保全 面接」で検索すると、この記事がだいたい1位か2位に表示されています。それでアクセスが多いのだろうと思います。
あなたもアクセスして頂いてありがとうございます。
このように多くの人に読んで頂く中で、「何か大事なことを書き忘れていないか?」それを何度も考えました。
設備保全の面接で大事なこと・・・
自分が面接官をやった体験、そして自分が面接を受けた体験、思い返してみました。そこで気が付いたことがありました。
ひとつだけ、大事なことを書き忘れていました。
それは、
「コミュニケーション能力」
これです。
本文の中で、
『設備保全の面接を受ける上で一番大事なことは、面接官にあなたなら工場の設備を任せても大丈夫だと信頼してもらうこと』
これを繰り返し説明してきました。それは確かにそうなのですが、技術面だけアピール出来れば大丈夫ではないと言うことを知っておいて下さい。
あなたのコミュニケーション能力もまた面接ではしっかりチェックされます。周囲のスタッフやお客様とのコミュニケーションがうまく出来ない人は、いくら保全スキルが高くても採用されません。
フィールドエンジニア、サービスエンジニアとして社外のお客様を訪問して設備保全、メンテナンスを行う仕事はむろんのこと、社内の生産ライン、工場ユーティリティ保全であってもコミュニケーション能力を求められます。
それが証拠に、保全やメンテナンスの求人条件を見て下さい。多くの求人で「コミュニケーションが出来る人」と言う条件がしっかり書かれています。
専門資格やキャリアを問わない求人でも、コミュニケーション能力は問われます。いや、資格もキャリアもない人なら余計にコミュニケーション能力が重要視されます。
なぜ設備保全の仕事にそれほどコミュニケーション能力が求められるのか?
それは、設備保全と言う仕事が自己完結の仕事ではないからです。同じ職場のメンバーはむろん、他部署とのかかわり、お客様とのかかわりの中で完結する仕事だからです。
人の話を聞いて状況を正確に把握する、自分の状況判断を人に正確に伝える。これも設備保全担当者として非常に重要な仕事です。
コミュニケーション不足による勘違い、誤解、判断ミスが大事に至ることもあります。自分がミスする場合もあるし、他の人にミスさせてしまうこともあります。
その結果不要な設備停止を発生させ、生産計画に余計な負担をかけてしまうこともあり得ます。お客様との信用問題に発展することだってあります。
言うまでもなく、コミュニケーション能力は別に設備保全と言う仕事だけに重要なのではありません。あなたもよく耳にする、「ホウ・レン・ソウ」の重要性そのものです。
そしてコミュニケーション能力は単に面接の場面だけ小細工して乗り切ればいいというものではありません。設備保全の仕事を円滑に進めるために必要不可欠な能力です。
常日頃からコミュニケーション能力を磨いておく必要があります。
では、どうすればコミュニケーション能力を磨くことが出来るのか?それをここで簡単に説明することは難しいです。ましてや私はその道の達人ではありません。
ただ1つだけ私が心がけていることを書かせて頂くなら、コミュニケーションの基本はまず、相手の話をしっかり聞くことだと思っています。
自分が話すことより先に、まずは相手の話を聞くことです。相手は何を自分に伝えようとしているのか、それを正確に理解することです。
これは面接の場面でも全く同じことが言えると思います。面接官の質問の趣旨は何か?何を話題にしようとしているのか?
そこを確認しながら話を聞き、それに対して自分の考えや思いを返すことが大事です。的外れな答えを防ぐ方法だと言えます。
従って、面接官の質問や話が聞き取れなかったり理解出来なかった場合は遠慮せず、もう一度話してくれるようお願いすることです。
質問を再確認することは決して悪い印象を与えることになりません。とんちんかんな答えをするよりずっとましです。
あるいは、「今のご質問は〇〇〇に関することだと思いますが、それは・・・」といった感じで、答える前に質問を繰り返すのもアリです。
もしもあなたが勘違や間違った受け取り方をしていればそこで指摘してくれることでしょう。
えらく長い補足記事になってしまいました。しかし、そのくらい面接におけるコミュニケーション能力の審査は重要です。必ずチェックされると思って下さい。
あなたの設備保全要員としてのキャリア、スキル、保有資格と同じくらい、コミュニケーション能力は大事だと認識して下さい。
面接官が、あなたに設備保全を任せても大丈夫だと安心してもらうには欠かせない能力であることを知っておいて下さい。
まとめ
今回、設備保全の面接を受ける上で、何が大事かと言うことを書いてきました。最後にもう一度繰り返しますが、一番大事なことはこれです。
『面接官にあなたなら工場の設備を任せても大丈夫だと信頼してもらうこと』
まさに面接はこの一点に集中して下さい。事前情報の収集もこの信頼を得るための手段です。集めた情報をどうやってあなたの信頼につなげるか。そこに知恵を絞って下さい。
あなたの資格、知識、技能、実績、性格、人脈、あらゆる角度から信頼に結び付けるストーリーがないか考えてみて下さい。それが最も大事な面接を受けるための準備と言えます。
ドアの開け方や椅子の座り方、お辞儀の仕方などは二の次、三の次で大丈夫です。一番大事なことに集中して下さい。一点突破が採用獲得への道です。
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